老後のために必要な生命保険の選び方と保障額の決め方

老後のために必要な生命保険の選び方と保障額の決め方

1. はじめに

老後の生活を安心して送るためには、適切な生命保険の選び方と保障額の決定が重要です。高齢になると収入が減少し、医療費や介護費用が増加するリスクがあるため、備えが必要です。しかし、どのような保険が適切で、いくらの保障が必要かを決めるのは難しいと感じる方も多いでしょう。

本記事では、老後のための生命保険の選び方と保障額の決め方について詳しく解説します。まず、生命保険の基礎的な知識を押さえ、次に老後に必要な保障額の考え方を説明し、最後に実際の保険商品の選び方について見ていきます。

2. 生命保険の基礎知識

生命保険の種類

生命保険にはいくつかの種類があり、それぞれ目的や特徴が異なります。以下に主な保険の種類を紹介します。

  1. 定期保険
    • 一定の保険期間(例えば10年や20年)を定め、その期間中に死亡した場合にのみ保険金が支払われます。期間が満了すると保障が終了し、更新もしくは新たな保険に加入する必要があります。
    • 保障内容がシンプルで、掛け金も比較的安いため、若いうちに加入しやすい保険です。しかし、年齢が上がるごとに保険料も上昇するため、老後まで継続するには注意が必要です。
  2. 終身保険
    • 一生涯保障が続く保険で、解約時にも一定の解約返戻金があることが特徴です。老後に解約して資金を受け取ることも可能ですが、掛け金が高いため、資金計画が重要です。
    • また、保険料の支払いが終わると、年齢に関係なく保障が維持されるため、老後に安心できる保障となります。
  3. 養老保険
    • 一定期間後に満期金が受け取れる貯蓄型の保険です。満期時には死亡保険金と同額の満期金が受け取れますが、保険料が高額になりやすく、利回りも低い場合が多いため、老後の資産形成としては他の選択肢と比較が必要です。
  4. 医療保険・介護保険
    • 老後に特に必要とされるのが医療保険や介護保険です。医療費や介護費用は年々増加しており、公的保険だけでは賄えない可能性があるため、これらの保険で補うのが効果的です。
    • 入院費用や手術費用をカバーする医療保険と、要介護状態になった際に給付金が支払われる介護保険は、老後の生活に備える上で重要です。

[まだ間に合う60歳からの保険-メディアックスMOOK-松田梓]

介護保険の仕組みと選び方 50代から始める老後の備え

保険料と保険金の関係

生命保険の保険料は、保険金額や加入者の年齢、健康状態などによって決まります。若い頃に加入すると保険料が安く、年齢が上がると保険料が高くなる傾向があります。また、病歴がある場合や健康診断での結果が悪い場合には、保険料が高くなることや加入が制限されることもあります。

3. 老後に必要な保障額の考え方

老後の生活にはさまざまなリスクが伴います。そのため、必要な保障額を見積もるためには、生活費、医療費、介護費用などを含めたライフプランを考える必要があります。以下に、具体的な計算方法を説明します。

生活費

老後の生活費は、現役時代の生活水準や居住地によって異なります。一般的には、現役時代の収入の7割から8割程度が老後の生活費として必要とされています。例えば、月に25万円の生活費を想定した場合、年間では300万円が必要となります。

これを基に、老後の期間(例えば85歳までの20年分)を考慮すると、300万円 × 20年 = 6000万円が必要です。しかし、実際には公的年金の受給や貯蓄の活用も可能なため、それらを差し引いた金額が必要な保障額となります。

医療費と介護費用

高齢になると医療費の負担が増加します。また、要介護状態になるリスクも考慮する必要があります。以下のポイントを参考に、医療費と介護費用の概算を行いましょう。

  1. 医療費
    • 高齢者の医療費は自己負担分も含めて年間数十万円かかる場合があります。一般的に、高齢者医療費の平均は年間20万円から30万円程度とされていますが、慢性的な病気や入院が必要な場合はさらに高額になる可能性があります。
  2. 介護費用
    • 要介護状態になった場合の費用も考慮が必要です。厚生労働省の調査によれば、平均的な介護費用は月額10万円程度ですが、在宅介護や施設介護などの形式により変動します。介護が必要な期間を5年と仮定すると、10万円 × 12ヶ月 × 5年 = 600万円が必要です。

必要保障額の目安

これらの生活費、医療費、介護費用を基に必要な保障額を考えます。以下は、具体的な例です。

  • 老後の生活費: 6000万円
  • 医療費: 600万円
  • 介護費用: 600万円

この合計で、7200万円が必要と試算されます。ただし、年金受給額や既存の貯蓄を考慮し、実際に不足する分を保障額とするのが現実的です。

例えば、年金受給額が年間200万円であれば、20年間で4000万円がカバーされるため、7200万円 – 4000万円 = 3200万円が不足額となり、この金額を目安に生命保険の保障額を設定することができます。

[医療保険は入ってはいけない!-新版-内藤-眞弓-ebook]

がん保険の選び方 シニア世代が知っておくべきポイント

4. 具体的な保険商品の選び方

老後に備えるための保険を選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。

終身保険を活用する

老後も保障を確保したい場合、終身保険が適しています。終身保険は一生涯保障が続くため、加入者が亡くなるまで保障が途切れません。保険料は比較的高額ですが、老後に資金を受け取る選択肢もあるため、安心して利用できます。

ただし、終身保険の保険料は高額になりがちなため、必要保障額に見合った適切な保険金額を設定することが重要です。また、一定期間後に保険料支払いが完了するタイプの終身保険を選ぶと、老後の生活において保険料の支払い負担が軽減されます。

医療保険や介護保険を組み合わせる

老後の医療費や介護費用をカバーするために、医療保険や介護保険の加入を検討しましょう。特に、高齢になると入院や手術のリスクが増えるため、医療費負担の軽減が必要です。

医療保険では、入院1日あたりの給付金額手術時の給付金額を確認し、必要な保障が含まれているかをチェックしましょう。また、介護保険では要介護状態になった際に一時金や年金形式での給付が行われる商品もあるため、自身のライフプランに応じて選びます。

定期保険の活用

もしも特定の期間のみ保障が必要であれば、定期保険の活用も選択肢に入ります。例えば、子供が独立するまでや、住宅ローンが完済されるまでの期間だけ保障を確保したい場合には、定期保険が適しています。定期保険は契約期間が限定されているため、終身保険に比べて保険料が割安で、保障内容もシンプルです。

ただし、定期保険は保険期間が終わると保障が終了し、更新の際に保険料が上昇することが一般的です。そのため、老後まで定期保険を継続する場合は、保険料負担が増大する可能性がある点を考慮する必要があります。

収入保障保険も検討する

収入保障保険は、被保険者が亡くなった場合に、遺族に一定期間にわたって月々の生活費が支払われる保険です。老後の保障としては利用されにくいですが、家族がいる場合や、一定の生活費を保障したい場合には有効です。

例えば、60歳までに夫が亡くなった場合、妻が毎月一定の収入を得ることができます。このように、収入保障保険は月々の生活費を確保する手段として役立ちますが、老後の保障をメインとする場合は、終身保険や医療保険との併用が望ましいでしょう。

[保険ぎらいは本当は正しい-SB新書-長尾-義弘-ebook]

介護保険の基礎知識 50歳からの賢い選択

特約の活用

保険には、主契約に追加できる「特約」があります。特約を活用することで、必要な保障を効率的にカバーできます。例えば、以下のような特約が考えられます。

  1. 入院特約
    • 入院費用をカバーするための特約です。特に高齢になると入院リスクが高まるため、老後に備えて付加することが検討されます。入院日数に応じて給付金が支払われるため、入院期間が長引いた場合の負担を軽減できます。
  2. 介護特約
    • 要介護状態になった際に、給付金を受け取れる特約です。介護費用は家計に大きな負担を与える可能性があるため、介護特約を付けておくことで安心です。要介護状態の判断基準や給付金の支払い条件などを確認し、自分に適した内容かを見極めましょう。
  3. 先進医療特約
    • 高度な医療技術を受ける際の費用を補助するための特約です。先進医療は公的保険の適用外で高額になる場合が多いため、特約で備えることにより、治療の選択肢を増やすことが可能です。特にがん治療や難病治療では有効な保障となります。
  4. 災害特約
    • 災害や事故により亡くなった場合に、通常の保険金に加えて追加の給付が行われる特約です。事故リスクを考慮する場合や、予期せぬ事態への備えを強化したい場合に役立ちます。

特約は保険料の追加負担となりますが、保障の充実化を図れるため、自分のライフプランに合致したものを選びましょう。また、特約の内容や条件は保険会社によって異なるため、複数の保険会社の条件を比較検討することが大切です。

5. 老後資金と保障のバランスを考える

老後の生活資金と生命保険による保障のバランスを考慮することが重要です。老後に備えるためには、生命保険に頼りすぎず、貯蓄や投資も含めた多様な手段で資金を用意することが効果的です。以下に、老後資金と保険保障のバランスの取り方を解説します。

貯蓄と保険の併用

老後の備えとして、貯蓄と生命保険を併用する方法が推奨されます。貯蓄は自分で自由に使える資金であり、緊急時や特別な出費にも対応できる点が魅力です。一方、生命保険は保障を目的とするため、貯蓄だけでは補いきれないリスクをカバーできます。

例えば、60歳で定年退職し、貯蓄が5000万円ある場合、これを老後の生活費や医療費、介護費用に充てつつ、生命保険で死亡時や介護状態になった際の保障を追加することで、リスクに対応する準備が整います。

投資信託や年金保険を活用

資産形成として投資信託や年金保険を活用することも一つの方法です。投資信託は市場の動向に応じて資産が増減するリスクはありますが、長期的な運用によって資産を増やすことが可能です。年金保険は毎月一定額の年金を受け取れるため、安定した収入源となり、老後の資金不足を補う役割を果たします。

ただし、投資信託や年金保険を利用する場合は、自身のリスク許容度や運用期間を考慮し、無理のない範囲で行うことが大切です。特に老後が近づくと資産を大きく増やすよりもリスクを抑えて資産を守ることが重要になるため、元本保証のある商品や低リスクの投資先を選ぶと安心です。

公的年金を見直す

公的年金も老後の生活資金に大きく寄与します。年金受給額は収入に応じて決まるため、老後にどれだけの年金を受け取れるかを事前に確認し、保険や貯蓄で補うべき金額を計算します。年金定期便や年金ネットなどを利用して、自分の受給見込み額を把握することが重要です。

また、早期受給(60歳から)や遅延受給(70歳から)など、受給開始年齢を選択することも可能です。年金の受給開始を遅らせると、受給額が増える仕組みがあるため、生活費や健康状態に応じて柔軟に計画を立てることが賢明です。

[保険ぎらいは本当は正しい-SB新書-長尾-義弘-ebook]

シニア世代が選ぶべき保険商品 医療と老後に備えるポイント

家族構成と必要な保障の考え方

生命保険の選び方や保障額の設定には、家族構成も大きく影響します。以下に、独身の場合と既婚・子供ありの場合の考え方を示します。

  1. 独身の場合
    • 独身で家族がいない場合、万が一の際に経済的に依存する家族がいないため、高額な死亡保障は不要であるケースが多いです。しかし、自分自身が病気や介護状態になった場合に備えるため、医療保険や介護保険を充実させることが望ましいでしょう。
    • 特に、独身の方は、医療費や介護費用を負担できる資金が限られている場合もあるため、入院費用や長期療養時の負担軽減を目的とした保障を準備することが大切です。
  2. 既婚・子供ありの場合
    • 配偶者や子供がいる場合は、自分が亡くなった後に残される家族の生活を支えるための保障が必要です。配偶者に収入があるかどうか、子供の年齢や教育費用の見込みによって、必要な保障額は大きく異なります。
    • 特に子供が小さいうちは、学費や生活費を支えるための保障が重要です。収入保障保険や、子供が成人するまでの期間に特化した定期保険の利用も有効です。また、配偶者が専業主婦(夫)である場合には、生活費の補填も考慮して、手厚い保障を確保することが求められます。

保険の見直しのタイミング

生命保険は、一度加入したら終わりではなく、ライフステージの変化に合わせて定期的に見直しを行うことが大切です。以下のようなタイミングで保険の内容を見直し、必要に応じて保障額や保障内容の調整を行うと良いでしょう。

  1. 結婚・出産時
    • 結婚や出産を機に、家族の生活を守るための保障を強化することが一般的です。特に収入保障保険や定期保険を組み合わせることで、万が一の際に家族の生活水準を保てるような備えを確保しましょう。
  2. 住宅購入時
    • 住宅ローンを組んだ場合、団体信用生命保険(団信)に加入することが多いです。団信は住宅ローンの債務が残っている状態で死亡した場合に、残りの債務を保険で返済する仕組みです。これにより、家族に住まいを残すことが可能です。既に生命保険に加入している場合、団信で住宅保障が確保されるため、生命保険の見直しを行うことで無駄な重複保障を避けられます。
  3. 子供の独立時
    • 子供が独立した時点で、教育費用や生活費の保障は不要となります。保障額の見直しや、老後の医療・介護に重点を置いた保障への切り替えを検討しましょう。定期保険の解約や、終身保険への移行も一案です。
  4. 退職・年金受給開始時
    • 退職後は収入が年金に限られるため、生活費や医療費に対する保障が重要です。退職金や貯蓄を含めた資金計画を立て、必要に応じて医療保険や介護保険の充実を図ります。保険料の支払いが厳しい場合は、保険金額の減額や、払い済み保険(保険料の支払いを停止し保障のみを残す)を検討します。

老後のリスクに備えるための選択肢

老後のリスクに備えるためには、生命保険以外の選択肢も含めて、多角的に考えることが大切です。以下に、老後資金を確保するための主な手段を紹介します。

  1. 年金保険の活用
    • 年金保険は、老後に毎月一定の年金を受け取ることができる保険です。公的年金に加え、民間の年金保険で安定した収入源を確保することが可能です。また、確定年金タイプや終身年金タイプなど、種類も豊富であるため、自分の生活スタイルに合った商品を選びましょう。
  2. 個人年金保険の選択
    • 個人年金保険は、契約時に指定した年齢から毎月一定の年金が支払われる保険です。老後の生活資金の一部として利用することができ、保険料控除の対象になる点もメリットです。支払いが一括払いか分割払いかを選べるため、ライフスタイルに合わせて利用できます。
  3. 介護付きマンションや高齢者住宅の検討
    • 自宅での生活が難しくなる場合に備え、介護付きマンションや高齢者住宅を選択肢に入れることも考えられます。これらの施設は介護サービスが充実しており、介護が必要になった場合に安心して暮らせる環境が整っています。施設の費用や設備、サービス内容を確認し、老後の住まい方を見据えた計画を立てましょう。

保険選びの際に注意すべきポイント

生命保険を選ぶ際には、いくつか注意すべきポイントがあります。保険に関する知識が不足していると、思わぬ出費やリスクに直面する可能性があるため、以下の点をチェックしながら慎重に選びましょう。

  1. 保険商品の内容を理解する
    • 保険の種類や保障内容、特約の内容をしっかり理解することが大切です。例えば、医療保険であれば、どのような入院や手術が保障対象となるのか、介護保険であれば要介護認定の条件など、契約前に確認すべき項目が多岐にわたります。
  2. 保険会社の信頼性を確認する
    • 保険会社の信頼性も重要な要素です。長期間の契約を結ぶ保険は、万が一の事態に備えるための保障であるため、経済的に安定した保険会社を選ぶことが望ましいです。また、会社の評判やサービスの質、契約者への対応もチェックポイントです。
  3. 将来的な見直しがしやすい商品を選ぶ
    • 生命保険は長期間にわたる契約であるため、将来のライフステージに合わせて見直しがしやすい商品を選ぶと良いでしょう。特に、特約や保障額の変更が容易な商品は、ライフイベントに応じて柔軟に対応できます。
  4. 保険料の負担を考慮する
    • 保険料の負担が大きすぎると、生活費や貯蓄に影響を与えかねません。保険料が家計に与える影響を十分に考慮し、無理なく支払える範囲で契約内容を決定することが重要です。

6. まとめ

老後のための生命保険の選び方と保障額の決め方について解説しました。老後に必要な保障額を見積もるには、生活費、医療費、介護費用を考慮しつつ、公的年金や貯蓄とバランスを取りながら準備することがポイントです。生命保険にはさまざまな種類があるため、自分のライフプランや家族の状況に合わせて適切な保険商品を選ぶことが重要です。

保険の選択肢が豊富な今、保険を上手に活用することで、老後の生活の安心を確保できます。しかし、保険に過度に依存するのではなく、貯蓄や資産運用、年金制度なども視野に入れ、総合的に老後の生活資金を確保していくことが理想です。

また、保険は一度加入したら終わりではなく、結婚や子供の誕生、住宅購入、子供の独立、退職といったライフイベントに応じて定期的に見直しを行うことが求められます。老後のリスクに備えつつ、家計に負担をかけない範囲で最適な保障を確保することが、将来の安心に繋がります。

最後に、保険選びに迷った場合や適切な保障額がわからない場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することもおすすめです。専門家のアドバイスを受けることで、個々の状況に最適な保険プランが見つかる可能性が高まります。

老後の生活に備え、安心して暮らせる準備を整えましょう。

保険の全てを説明するには短い文章では限界があります。更に多くの知識をつけましょう。

定年後の医療保険 必要なのか不要なのか?

関連記事


全ての記事を見る

全てのカテゴリを見る

全ての記事を見る

全てのカテゴリを見る